先日、福井センイさんの宿泊施設「SEW STAY」に宿泊する機会がありました。SEW STAYは、縫製事業で70年以上操業して来られた福井センイさんが新しく立ち上げられた宿泊事業です。

まずはロケーションですが、SEW STAYは河川と街並みが一体となった印象的な景観で知られる舞鶴市吉原地区まで歩いて行くことができる場所に位置しています。
宿泊当日はちょうど桜の時期で、桜咲く吉原地区の景観を観ることができたのは貴重な体験でした。

古民家を改修して作られたSEW STAYはエントランスから部屋までも独特で、狭い路地に迷い込んだような、でも天井は高くて採光があり、突き当りには奥の川まで見えて解放感もある不思議な作りになっています。

部屋は福井センイさんが長年培われた縫製技術とこだわりを感じさせる空間で、周囲をぐるりと囲う一枚もののカーテンを広げると、部屋が完全に布に包まれる作りです。

古民家の面白味ある壁や柱、天井等は大胆に残し、新しく改装された部分とあわせて、アート的でありながらどことなく生活感が感じられる空間になっています。

SEW STAYは「外との境目が曖昧であることによって感じられる体験」そのものが一つの価値として設計されているので、カーテンを完全に締めない限りは、建物の外につながる路地のような部分が見える作りになっているのが特徴です。

僕はびびりなので、夜真っ暗になって帰ってくると、正直その境い目の曖昧さが少し不安な感じもしました。
ただ、周囲のカーテンを完全に締めて、電気を消して就寝すると、周囲を布に包まれた感覚が一層際立って、なんとなく蚕にでもなったような、意外なほどの安心感があって、気持ちよく眠る事ができたのが印象的でした。
朝になってカーテンを開けると、窓から川が風にそよぐ風景に、橋を行きかう人々や車の動きが清々しく感じられます。

また、カーテンを入り口の側まで開けた状態にすると、部屋につながる路地部分と外の繋りがより強く感じられます。行き交う車などの気配を感じながらPCに向かって仕事をするのも、なかなか良いものです。家にいながらカフェで仕事をしているような感覚。

その他、泊まってみて感じたのは、全体的に非常に清潔で、タオルや枕、ふとんなどのファブリック類の品質がとても良いこと。ファブリックの肌触りが良いと、それだけで心地よさが格段に上がりますよね。この辺りはさすが福井センイさん、という感じ。
また、お部屋に備え付けられていたドライヤーの性能が素晴らしく良く、超強力な暖房とデロンギで寒さ対策が完璧だったのもありがたかったです。

追加で希望を上げるとすれば、個人的には小さくて良いのでテーブルが欲しいと思いました。特に夜はカーテンを閉めると周囲にあるテーブル的なスペースが使えなくなってしまう構造になっており、作業場所がなくなってしまうのです。
この宿に泊まってまで仕事をするというのも無粋な考えかも知れませんが、デスクに置きたいものは何かしらあるもので、折り畳みのテーブルで良いので使えるようになっていると、より快適に過ごせると思います。

トータルの所見としては、この空間での一晩はアートと生活感が溶け合うような、なかなか他では得難い特別な体験になったと感じました。
この宿はカーテンという緩やかなセパレータで得られる「外との境界との曖昧さ」を楽しむものなので、普通のホテルの機能的な安心感を重視する方には合わないかも知れませんが、「せっかく舞鶴まで行くなら普通とは違った体験をしてみたい!」と思われる方には、この感覚を楽しんでもらえると思います。
ご興味のある方は、ぜひこのSEW STAYに訪れてみてください。